鶏胸肉には良質のタンパク質の他に、疲労を回復させるといわれるイミダペプチド、肝機能を高めるといわれるメチオニン、ビタミンAなどが多く含まれています。
最近は鶏胸肉だけを特集した本なども出ているくらいですが、胸肉特有のパサパサ感があり、なかなか、もも肉ほど美味しくなりません。
ここでは、ガッテンなどで紹介させていた画期的な方法を含め、鶏胸肉を柔らかくする方法をまとめてみました。
鶏胸肉を柔らかく、ジューシーにするための切り方
鶏胸肉は長くて、丈夫な筋繊維でできています。そのため鶏胸肉切り方には2種類あります。
丈夫な筋線維のため、普通に加熱すると筋繊維がたんぱく質凝固を起こし、固くパサパサした食感になってしまいます。
しかし、鶏胸肉は筋肉の動きがある程度決まっているのでハッキリした筋肉繊維の方向があり、繊維に対してどう切るかによって大きく触感、味が変わってくるといわれています。
(鶏肉は、牛肉と違ってドリップが流れやすくなってしまうので、叩いてはいけないとのことです。)
繊維を切断するように切る(お勧めの方法)
・肉の繊維が短くなり、鶏胸肉特有のパサパサした食感が少なくなります。
・食べた時、口の中で繊維に沿って肉がほぐれるので、歯が悪いお年寄りや、小さな子どもでも楽に噛み切れ、劇的に食べやすくなります。
繊維に沿って切る
繊維に垂直に断ち切るのではなく、あえて繊維に沿って切る方がいいこともあります。
蒸し鶏などを作って手で裂く場合や、バンバンジーのように形を崩さずしっかり炒めたい細切りの時です。こんな場合は繊維に沿って切れば形崩れを防ぐことが出来ます。
唐揚げなど普通の料理で繊維の方向を無視して、繊維に対して平行に切ってしまうと、噛んでいるうちに口の中の水分が奪われる感じがするほどパサつきます。
繊維の方向や切り方が分かる動画を紹介
鶏むね肉の切り方(柴田真希)繊維の方向が分かる動画
鶏胸肉を柔らかく、ジューシーにする処理の仕方
鶏胸肉がパサつくのは、肉のタンパク質が変質してしまうことにあります。
そのため、いろいろな方法で肉のタンパク質を分解したり、変質するのを遅らせるなどの方法を取れば、鶏胸肉でもジューシーな肉質を楽しむことができます。
鶏胸肉処理:ヨーグルトを使う
ヨーグルトに含まれている乳酸菌は肉を柔らかくする酵素、プロテアーゼを生成するといわれています。よってヨーグルトで処理すると、肉が柔らかくなります。
これを利用したのがインド料理タンドリーチキンです。
タンドリーチキンはガラムマサラ、チリペッパー、ニンニク、ケチャップ、塩などに胸肉を冷蔵庫で1~2時間程度漬け込んだものです。
鶏胸肉処理:ハチミツを使う
ハチミツの糖成分(ブドウ糖と果糖)は肉の組織に浸み込んで、焼いた時に、肉のタンパク質が凝集して固まるのを防ぐ効果があります。
また、これらの糖分は、肉を焼くと肉のタンパク質と反応してメイラード反応(糖化反応、こんがりきつね色)を起こすため、肉の風味も上がり、美味しく焼き上がります。
さらに、ハチミツには保湿性があり、肉汁を閉じ込め、パサパサになるのを防いでくれます。
鶏胸肉処理:塩麹を使う
麹はその発酵過程で、さまざまな酵素を作り出します。
デンプンを分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼ、タンパク質を分解するプロテアーゼなど消化酵素も含むといわれています。
これら消化酵素の中で鶏肉を柔らかくする効果があるとされているのは、タンパク質を分解するプロテアーゼです。
プロアテーゼは肉のタンパク質を分解してアミノ酸にしてくれます。
これにより、肉を焼いた時のタンパク質凝集を防いで、柔らかくジューシーに焼き上げることができます。
また、アミノ酸はうま味成分でもあります。よって、肉のうま味も増すことになります。
鶏胸肉処理:パイナップルを使う
パイナップルには、タンパク質分解酵素の中のプロテアーゼに分類されるブロメラインという酵素が多く含まれています。
これはお肉を食べた時体内で分泌され、お肉の分解を助けてくれる酵素なのです。
非常に強力な酵素で、パイナップルを食べた後、舌がピリピリすることがありますが、それもブロメラインによる刺激が原因です。
ブロメラインのタンパク質分解作用が強力で舌を刺激して起こるのです。
鶏胸肉料理の時、肉をパイナップル果汁に漬けておくと柔らかくなります。
時間が長すぎると肉が溶けだすので注意が必要です。
酢豚などの肉料理にパイナップルが入っているのも、肉を柔らかくするためです。
鶏胸肉処理:マイタケを使う(ガッテンより)
ガッテン(2016年4月27日)では鶏胸肉を美味しくする方法を特集していました。その中の一つの方法です。
マイタケ20gを細かく刻み、大さじ一杯の水、砂糖を小さじ1杯、塩を小さじ1/4と一緒に袋の中に入れて揉み込み均一にします。
その中に250gの鶏胸肉を入れ、肉のまわりにマイタケがまんべんなくつくようにしながら 袋ごと1分間よく揉みます。
その後90分ほど常温に置くだけで鶏胸肉が柔らかくなります。
その鶏胸肉を使って作ったナゲットを食べたゲストは「噛む前から全然違う」、「噛むというよりもとろけるって感じ」などとコメントしました。
マイタケ入りの蒲鉾は固まらないため開発失敗した経緯があるように、マイタケにも、プロテアーゼの仲間のようなタンパク質分解酵素が、多く含まれている可能性が考えられます。
鶏胸肉処理:「お肉やわらかの素」を使う
「鶏胸肉がごちそうに!」というキャッチフレーズで味の素が販売している調味料です。
お肉の両面に調理前にまぶして、たった5分置くだけで、肉が柔らかくなる肉用調味料です。
そのメカニズムは味の素のホームぺージによると、
・「お肉やわらかの素」を肉にふりかけると、含まれている酵素が肉の繊維をほぐします。
・ほぐされた肉の繊維の間に「お肉やわらかの素」に含まれる細いでんぷんが入り込みます
・肉を加熱する時、そのでんぷんが肉汁を逃さずキープしてくれます。
・これらの効果で、調理した肉は冷めてもおいしさをキープします。
(使われている酵素はパイナップルのお肉柔らか成分と同じ働きの酵素とのことで、プロテアーゼの仲間だと思われます)